離してやれない/炭善

※最終回より前に書いたので原作と展開が異なります
転生ネタ。善逸が女性に転生します

この世から全ての鬼を滅するという鬼殺隊の悲願を叶えてから数年が経った。
鬼舞辻無惨を倒したことで鬼の出現はぴたりと止んだ。
その後、およそ一年に渡り鬼殺隊士、隠による綿密な調査を経て、産屋敷家の当主は鬼の滅殺を確認したというお触れを出した。
しかし、鬼舞辻無惨が何故鬼になったかまでは調査が及ばなかった。
鬼殺隊は徐々に解体されていったが、鬼への対抗手段であった呼吸法の継承は続ける方針で固まった。そうして鬼殺隊は柱や一部の隠、刀鍛冶の里などの規模を縮小しつつも、技の継承が成されるように動いていた。
鬼殺隊に集まっていた者は、めいめいの道を歩もうとしていた。
生まれ故郷に帰る者、お館様の伝手で就職先を見つけ新天地へと向かう者。鬼殺隊の一員として、産屋敷家を支えたいと志願する者も多くいた。

聴き慣れた羽ばたきの音と、高い鳴き声が聞こえて来る。短く整えられた金の髪、詰襟の隊服に蒲公英色の羽織りを着た青年の手に、一羽の雀が止まる。
青年の名は我妻善逸という。皆が皆、新たな道を歩み出す中未だ行くあてを決めていなかった。
善逸は今、蟲柱胡蝶しのぶの跡を継いだ栗花落カナヲが管理する蝶屋敷に身を寄せていた。
「久しぶりだね、チュン太郎」
腕にとまった鎹雀から文を受け取る。
鬼の頸を落としていた頃は頻繁に見ていたこの雀の姿も、随分見ていなかったように思える。それだけ、鬼の脅威に晒されることが無くなったのだ。
善逸宛の手紙の差出人は、竈門炭治郎だった。善逸は、差出人を知るや否やむすりと口を引き結ぶ。
鬼舞辻無惨を倒すことに多大な貢献をした炭治郎は、無惨との戦いの傷を癒した後は鬼殺隊が行う調査に向かっていた。もう二年は、顔を合わせていないだろうか。
ー炭治郎は、鬼の滅殺の確認が取れたので、、無事に人間へと戻った妹の禰豆子と共に生家へと帰ることを決めたという。
とても喜ばしいことだと思う。炭治郎は、唯一残った家族である禰豆子と共に生家に帰ることができる。帰る家がある。あぁ、やっと。無惨との戦闘中に、彼を鼓舞する為に放った言葉を思い出す。
お前は死なないと、人間に戻った禰豆子と共に生まれ育った家に帰るのだと。まだ生きようとする心音に向かって叫んだ言葉。それが成就する瞬間が近いのだと思うと、込み上げてくるものがあった。
しかし、善逸は文を読み進めるごとに眉を潜める。
文に書かれている文章は、季節の挨拶の書き出しから始まり、故郷の家へと帰ることを決めた旨が書かれてあった。ここまでは良い。ここまでなら、友人にこれからの道行きを伝えるものとして納得ができる。問題は、その後に続く文章だった。
『善逸にも俺の故郷に来てほしい。出来るならば、共に住みたい』
筆まめな炭治郎らしく、数行に渡って書かれている内容は、おおよそこのようなものであった。
嬉しい、と思った。共に住みたいと、一緒にいたいのだと伝えてくれることが。
だが炭治郎の提案に善逸は眉を潜めたままだった。むしろ、その眉頭はどんどん歪んでいっているようにも見える。
「……こいつは、本当に……」
何から説明してやれば良いのやら。
同期で、一つ年下で、過去の恋人である竈門炭治郎に。

善逸と炭治郎は恋仲であった。
現在は恋仲ではない。恋仲であったことはもう過去の話だ。
愛想が尽きたとか、他に好い人が出来たとか、そんな理由ではない。けれど自分達のような同性同士が好き合っている関係の場合、どうしても逃れることが出来ない理由ではあった。
どうせならば、他に好い人が出来たから、愛想が尽きたのだと突き放せれば良かったのに。未だに別れ話をした時のことを思い出すと決まって胸がきりきりと痛む。
別れ話をしたのは、柱稽古が始まってから少し経ってからだった。禰豆子が太陽を克服し、鬼達の出没がぱたりと止んだころ。
風柱の屋敷で再会した時に、善逸から別れ話を切り出した。あの時の炭治郎の驚愕の顔は、今でも目に浮かぶ。幼さの残るまろい目を限界まで見開き、信じられないものを見るような目でこちらを見つめていたのを覚えている。そこには、怯えの色も混じっていた。
禰豆子が太陽を克服した。鬼の出没が止んだ。無惨は禰豆子を狙い、戦闘は今まで以上に苛烈なものとなるだろう。これからなのだという時に、恋愛などに現を抜かしている場合か。妹を人間に戻して家に帰るのだろう。自分達の関係もここまでだ。無事に妹を守り、無惨を討ち倒しせるように鍛錬に励めと背中を押した。
善逸が伝えた事は、おおよそこのようなものだった。もちろん、そんな言葉で炭治郎は納得しなかった。
禰豆子のことは、必ず人間に戻す。鬼舞辻無惨は赦すことのできない存在だ、必ずかの男の頸に刃を振るい、討ち取ってみせる。そして、その上で、善逸の事を一生涯かけて心から愛すると決めているのだと。生涯、この想いは潰えることはないのだと。
怒りから激昂する彼の想いを真正面から受け止めて、嗚呼、愛しいと思った。哀しいとも思った。
可哀想な俺の恋人。捨て子で、人より少し耳が良いくらいの、すぐに泣いて喚くような男に恋をしてしまい、愛してしまった哀れな男。
そんな炭治郎の道行きくらいは、年上である己が導いてやらねばならないと善逸は思ったのだ。
いつまでもこんな関係は続けられない。炭治郎は時折自発的に言っていたように竈門家の長男である。彼が受け継いだ耳飾りとヒノカミ神楽の継承は、善逸が炭治郎を望めば途絶えてしまう。
いつか、終わりにしようと思っていたのだ。
別れを切り出した善逸とて、炭治郎のことを愛していた。炭治郎から愛を受け取り、愛を返せるようになった。人を愛することを知ったのだ。今まで、恋ならいくつもしたことがあった。自分が懸想されることは、目の前にいる男以外からは無かったけれど。
つまるところ善逸は、炭治郎が父から託されたものを継承していって欲しかったし、その継承の邪魔になるような存在になりたくはなかった。だから、炭治郎に別れ話をもちかけたのだ。
その後、善逸からの別れ話に怒った炭治郎を善逸は宥めた。それはもうとことん宥め倒した。抱きしめて、頭を撫で、髪を梳かし。
この世界で一等大切な存在だった。守りたい、守られたい、愛したい、愛されたい存在だった。
だからこそ、炭治郎が善逸に囚われてしまうことがないように、わざと残酷な言葉を吐いた。
お前には好いおなごが見つかるよ。
若さ故の過ちって言うだろ。
目を覚ませよ。
とどめに、将来はお前の子を抱き上げてみたいなぁ、なんて。残酷な言葉をすらすらと吐いた。
炭治郎は善逸の言葉に大層傷ついたようで、常にない様子で善逸にしがみつき、涙を流した。何故なんだ、愛していると言ってくれたのは嘘だったのかと問われても、答える事は出来なかった。
だって、愛しているのだから。愛しているから、彼の一番の幸福を願っている。気立ての良いお嫁さんをもらって、子宝に恵まれて。父親から継いだ炭焼きの仕事に精を出しながら、家族に囲まれて幸せに暮らす。
そんな炭治郎の未来を、善逸は夢見ていた。その未来に、自分の姿は炭治郎の傍には無かった。
善逸の耳に届く炭治郎の音は、それはそれは悲痛な音を奏でていた。
それはどこか、心が壊れる音に似ていた気がする。

きっとあの時、善逸は炭治郎の心に消えない傷を残した。
今にして思えば、何もあんな言い方をしなくても良かったかもしれないな、と善逸はひとりごちる。
決して、炭治郎のことを傷つけたいわけではなかった。
癒えない傷を残すつもりはなかった。
けれど、生半可な言葉では炭治郎は納得しない。善逸の言葉が、たとえ一生涯消えない傷を炭治郎に残しても、その傷を抱いたまま炭治郎が嫁を娶り、ややこを授かり、父の形見なのだと言う耳飾りとヒノカミ神楽を繋いでくれるなら。
それ以上に善逸が望むものなんて、なにもありはしないのだ。

善逸が現在蝶屋敷に身を寄せている事は、おそらく炭治郎も知っていたのだろう。文が送られてきた数日後、蝶屋敷に炭治郎は顔を出した。
蝶屋敷の面々とも久方ぶりの再会らしく、話が弾んでいるようだった。何とはなく出て行きにくく、耳をそば立てて炭治郎達の声を聞いていた。禰豆子を伴って足を運んだらしく、鈴の鳴るような、それでいて凛とした可愛らしい声が聞こえる。いつだったか、禰豆子は利発な子だったんだ、と炭治郎が語っていた気がする。
本当に禰豆子ちゃん、人間に戻ったんだねえ。竹を咥えた少女との夜の散歩を思い出す。時折炭治郎や伊之助も伴ってする散歩は賑やかで、心がぽかぽかと温かくなるような心地がした良い思い出だった。
善逸が過去の記憶に想いを馳せていれば、自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。愛しい声。出会った時よりは少しだけ低くなった、太陽を声に例えるのならばこんな声をしているのだと思えるような、優しさと強さが混じった声。
「善逸、探したぞ。こんなところにいたのか」
「や、久しぶり。二年ぶりだっけ?禰豆子ちゃんはどうしたの」
「禰豆子は今、アオイさんに診てもらっているよ。もう人間に戻ってはいるが、定期的に経過を診てもらった方が良いと思ってな」
それで禰豆子を連れてきたのか、と合点がいく。そのまま炭治郎は善逸の目の前に立ち、返事は、と問うてきた。
「……返事?」
「ああ。俺と一緒に来てくれないか」
「却下。もう俺とお前は恋仲じゃないんだよ」
ばっさりと告げれば、炭治郎は見るからにしょんぼりと落ち込んでみせる。
ええい、そんな可愛い顔をするな。そんな事で俺の覚悟が揺らぐなんて思うなよ。
善逸は徐に腕を組んで、柱に背中を預ける。炭治郎と善逸の間に、ひと一人分の距離が空いた。
「……忘れたの。俺はお前の子供をこの腕に抱きたいんだ。祝言を挙げて、みんなに祝福されるお前を見たいんだ。わかってくれないか」
「それは無理だ!わかってやれない!」
「……お前なら分かるでしょ、俺がこれを本心から言ってることくらい」
炭治郎は聡い。それに何より、炭治郎には人の感情すら嗅ぎとれる嗅覚がある。嘘をついていたら嘘の匂いがする、なんて見抜けられることなんてよくあることなのだ。
「っ……だが、」
「だがも何も無いよ。俺はお前とは行けない。ごめんな」
「……」
炭治郎は何も言わずに善逸の瞳を見つめる。
善逸も、この時ばかりは目を逸らさずに炭治郎の瞳を見つめた。
綺麗な赫灼だと思った。数年前に比べたら輪郭も随分と細まり、青年らしさの増した美丈夫が目の前に立っている。
誰かにやるには惜しい程男前だった。もう、自分のものではないのにそんなことを思う。
「……善逸、お前の気持ちは分かった。いや、分かりたくはないけれども。お前の覚悟は分かった」
ふぅ、と炭治郎は息を吐く。その様子はまだ一つも納得などしていませんと語るようだった。
「ただ、ひとつだけ確認させてくれないか。これを聞けたら、俺はお前と、恋仲で……、無くても、構わないから」
「……うん、いいよ。ひとつだけね」
何を聞かれるのだろう。この後の善逸が行く末だろうか。はたまた、他に好い人が出来たのかとか、そんなことか。いいや、炭治郎はそんなことを聞く事はないだろう。そもそも他に気をやっていたら、それこと匂いで早々に気づかれていただろう。
「……俺のことを、まだ愛してくれているか」
「……愛してるよ。この世で一等大切で、一等愛している」
一等愛しいひとの、一等悲しい表情を見て心が悲鳴を上げる。
そんな顔をしないでくれ。
そんな、気付きたく無かった事実に気付いたような顔をしないでくれ。
悲痛な音を立てないでくれ。
彼のそばに居たい。
彼と生を共にし、寄り添い生きていきたい。
一つ屋根の下、愛を囁きたい。愛を囁かれたい。
欲は募る。知らず、涙が溢れて視界がぼやける。
嗚呼、愛しいなぁ。愛しいなぁ。好きだなぁ。そんなことを想いながら涙を流せば、炭治郎に抱きしめられていた。炭治郎も泣いている。
炭治郎から聞こえてくる音は驚くほどに凪いでいたけれど、その音はどこか傷付いていた。きっと一生消えない傷を負ってしまったのだろう。その傷を抱えて、生涯生きていくのだろう。この世で一等好きな人の、心の奥深くにつけた傷痕。願わくば、生涯癒えずにいて欲しい。来世でも、ずっと。炭治郎の魂に刻み付けてしまったその傷痕を、きっといつか、責任を取るから。

静かに涙を拭いあい、どちらからともなく唇を寄せる。きっと、これが最後の口付けだ。
「善逸。俺は、嫁を娶り子を成そう。お前が望むなら。だが、俺の心はお前のものだ」
善逸の耳元でうっそりと、炭治郎が囁く。善逸はひくりと肩を震わせ、炭治郎の胸元に手を置いて距離を取った。
「だめだよ炭治郎。お前の心は奥方のものでなくちゃならない。心の伴わない、形だけの婚姻なんてお前も奥方も幸せにはなれないよ」
「……だが!」
善逸は、そっと炭治郎の頭を撫でた。そのまま髪を梳き、子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「俺をお前の一番にするな。
お前の一番は未来の奥方、二番目が生まれてくる子供、三番目が禰豆子ちゃん、四番目にお前自身。ここまできてやっと俺の番。もちろん、子供が二人以上生まれたら、俺の順位は繰り下がっていく。それでいいんだ」
「ッ……!」
「なぁ、炭治郎。俺はお前の事が好きだよ。愛している。この世で一等大事なものだ。
だから、お前には幸せになってほしい。お前の子に、お前の家が守ってきた神楽と耳飾りを繋げてほしい」
炭治郎の頬をなぞれば耳飾りに指があたる。しゃらん、と鳴る耳飾りの音が、善逸は密かに気に入りだった。
「……俺も、お前の事が好きだ。一等好きだ。愛している。
だが、お前は、お前は幸せになれるのか。俺にだけ、幸せになれと言うのか?そんなのは、そんなことは、許せない」
どこまでも優しい男だな、と双方に思う。その優しさの方向が、どこかずれていることに二人は気づいていない。
「ふふ、教えてやろう炭治郎。
俺の幸せはな、お前の子を、いつかこの手で抱く事だ。それ以外何もいらない」
「……お前は、ずるいな」
「まあね。そうやって生きてきたから」
得意げに笑みを深める善逸の手を、炭治郎は握りしめる。善逸は炭治郎の手を握り返すことはなかった。
そんな、独りよがりにも思える指先を放してしまうのが惜しい。
このままどこかへ拐ってしまえたらいいのに。炭治郎の手を取って、生家へと共に歩んでくれたら。もう、何もいらないのに。
「……ごめんね。愛してたよ」
そう呟いた善逸の笑顔は、眼元が少しだけ赤くなっていて不格好だった。けれど、世界で一番愛おしい笑顔を、噛み締めるように瞳に焼き付けた。

「くぁ……」
口元を手で隠しながら欠伸をする。春の朝日を浴びながら、善逸は校門の前で立っていた。
時は令和。今世は女性として生を受けた我妻善逸は、何の因果か大正時代を生き抜いた記憶を持ち、同じような生い立ちをなぞって今まで生きてきた。
中高一貫の学園で、風紀委員の仕事である朝の服装チェックを行う。
新学期早々に服装違反をするような輩は、つまりは違反常習者である。もう顔も名前も覚えた相手に形だけの注意を行い、リストに名前を書き留める。毎朝の校門を抜けられたところで、体育教師である冨岡先生からは逃げられないのに。いっそ憐むような目で違反常習者達を眺める。
「おはようございます」
「はい、おはようござい……ま……」
赫灼の瞳に、後ろに撫で付けられた髪。額には大きな火傷の痕。極めつけに、耳には大振りのピアスが。
「……ピアス、違反だから、外して」
「これは父の形見なので外せません!」
「……あ、そう」
炭治郎だ。竈門さんちの炭治郎くんだ。善逸は冷や汗が止まらない。震える指で、チェックシートに竈門、と書き始めたその時。
「善逸!覚えてるな!?」
「っ、え?な、なにが、」
「俺はまだ名乗ってない。名札なんて無い。なんで俺の苗字が分かるんだ」
「……あ」
しまった。善逸は今年で高校二年生になる。炭治郎、ひとつ年下だった。よくよく考えなくても、炭治郎は新入生だ。普通なら、面識のない相手の苗字なんてさらさらと書けない。特に、竈門なんて馴染みのない漢字など余計に。
「善逸……、善逸!」
がしりと腕を掴まれ、校門をすり抜けて人気のないところまで連れて来られる。道中、振り払おうとしたのに全然、びくともしなかった。改めて善逸は自分が女で、炭治郎は男なのだと突き付けられた気がした。
そのまま炭治郎の腕の中に閉じ込められる。ばくばくと鳴っている心音は、自分のものか、それとも炭治郎のものか。
大正の頃と違い聴力が良くないから、判別がつけられない。
「善逸!善逸!やっと見つけた!
ああ、善逸!もう、もうお前を離してはやれない!
分かるか善逸。お前は女、俺は男だ!分かるか、この意味が!お前が、前世で俺に言った言葉、忘れたとは言わせないぞ。今生では絶対逃してやらない!
俺の嫁になってくれ、俺のややこを産んでくれ!そして、そのややこを腕に抱いてくれ!」
まあ、熱烈なプロポーズだこと。炭治郎からぶつけられた言葉を三十秒ほどかけて理解した時に善逸が思ったのは、そんなことだった。
「……炭治郎。炭治郎。俺、今世は女なんだ。で、お前は男で。観念して捕まってやるよ。俺をどこにもやるなよ炭治郎」
「ああ……ああ!どこにもやらない!俺の、俺のものだ、善逸……!」
痛いほどに抱きしめられて、炭治郎の想いの深さを思い知る。自分が彼につけた傷の深さも。たまらなくなって、涙を流しながら炭治郎の背に腕を回した。
何も、相手を求めていたのは炭治郎だけではなかったのだから。
「責任取って、結婚してやるからさぁ。お前のこともちょうだいよ」
涙まじりにそう言えば、炭治郎は泣きながら笑った。

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