祭りの前日/ニゴチゴ

 十月三十一日。世間一般にハロウィンという文化が浸透している。妖精や悪霊のほか、親戚や親友などの良い霊もこの日に帰ってくるとされ、悪魔やお化けなどの仮装をする事で悪い死霊から身を隠すといった効果もあったらしい。
 しかしそれも昔の話で、現在はひとつのイベントとして人々が楽しむものとなっている。店ではこの時期だけの限定品を売り出したり、ハロウィン当日の夜になれば街の人々は仮装をするらしい。
 ヘド博士やボク達ガンマが働くカプセルコーポレーションも例外ではなく、この時期限定の新商品が絶賛発売中だ。現在は既に次のイベントであるクリスマスに出る新作の美容品開発がいよいよ大詰めを迎えようとしている。まだハロウィンが終わってもいないのに、不思議な話だ。
「1号はハロウィンになにかするのか?」
「なにか、とは」
 ボクの隣に立って書類の整理をしている1号に話しかける。ボクと1号はガードマンとしてカプセルコーポレーションに雇われているけれど、時折ヘド博士やブルマ博士の手伝いをしていた。今はヘド博士が次に出す新作美容液の開発の手伝いをしている。
「だからさ、なにかこう、仮装とか」
「やらない」
「ええ~……ノリが悪いなあ、なにかこう、ないのか?」
「無い。仕事中だ、私語は慎め」
 そう言って1号は書類を手に持ち、ボクの方に向けていた目線をヘド博士の方へ向けてそのまま歩いて行ってしまう。
 1号の気を引いて話をする作戦は失敗してしまった。1号とハロウィンっぽいことやってみたいのにな。それに、サボりたいなと思っていた書類整理もしなくてはいけなくなってしまった。目の前に広がる膨大な資料の整頓を開始する。ボクと1号とヘド博士だけでやるならわざわざ書類にしなくても良いのに、会社で働くとなるとそうも言っていられない。煩わしさを感じつつも、ガンマのスペックをもってすればすぐに終えられる仕事に取り掛かった。

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