ベッドで横になって、後ろから1号を抱き抱える。とは言ってもボクと1号の体格は同じだから、少し上にずれて抱きしめているからと言ってとても余裕があるわけじゃない。傍から見たらしがみついているようにも見えるのかもしれない。そんなことを考えながら、1号の顎の下を指先でくすぐるように触れた。
「っ、ん……」
ぴく、と身体を震わせて吐息と聞き間違えるように小さな声を上げる。1号の脚に自身の脚を絡ませて、そのまま1号の後頭部に額を当てるとカツン、と高い音が鳴った。
「1号……」
カプセルコーポレーションでの仕事を終え、お風呂で一日の汚れを落としてベッドで横になるこの時間が好きだ。本来ボクたちに睡眠は必要ないからベッドと不要ではあるのだけど、そこはその、今は恋人たちが睦み合う事に及ぶ前段階というか。特に意味もなく触れ合って、身を寄せ合う時間だ。
1号の手に触れて指を絡めようとすれば、1号が腕の中で身じろいだ。抱きしめていた腕の力を抜いて1号の好きにさせれば、ボクの方へ向き直るように体勢を変えて、控えめに身を寄せてくる。抱きつく一歩手前とでも言うような距離感にまで近づいてくることはあるけど、1号から抱きついてくることなんて滅多にない。だけどボクの方へ近づいてくれるだけで嬉しくて、自然と1号に手を伸ばして抱きしめてしまう。今だってそうだ。身を寄せてきても縮こまる1号に手を伸ばして、抱きしめて──
「え」
ボクが抱きしめるより先に、1号から抱きつかれた。ボクから抱きしめないと、1号から抱きしめ返されることなんて今までなかったのに。
「……2号」
「ぅ、えっ、何、1号」
しかもそのまま、ボクの胸板に頬を寄せて更に身を寄せてきた! どうしたんだろう1号。いいや、1号から抱きついてくれたこと、甘えるような仕草をしてくれていることは途轍もなく嬉しい! でも急にどうしたのだろう。
「い、いや、その…………」
「うん?」
言い淀んでいるうちに恥ずかしくなったのか、身体を離そうとした1号に気づいてすかさず1号の背中に腕を回して抱きしめる。びく、と1号が大袈裟に震えた気がしたけれど、何かあったのだろうか。それとも今日は、ボクとエッチなことはしたくない気分なのかな。
「……今日は、しないのか」
「え」
衝撃。あるいは驚愕。あるいはショック。ダメだこれ全部同じ意味だな。とりあえずびっくりした。1号からお誘いを受けるのは初めてだ。なんだか初めての事が多いな、今夜は。
「したいし、するつもりだけど……急にどうしたんだ?」
1号の背中や腕を、そういう意図を持って触れる。撫でるように、時折柔らかく揉むように触れれば1号が耐えきれない、と言うように小さな喘ぎ声を上げて、そして俯いた。
「いつも、ベッドに上がって少ししたらすぐに、キスをしてきたり……その、行為に及んでいたのに、今日はやけに触れ合う時間が多いからだ。今日はそういう日なのか?」
「えっ、いやいや。全然する気ある。でもさ、1号とゆっくり触れ合ったり抱きしめたりしたいな〜って思ってさ。ダメか?」
「ダメではないが……そう、か」
そう言って1号がボクの方へ体重をかけてくる。それが嬉しくて1号のことを抱きしめた。
「わざわざ確認するなんて……1号、ボクとエッチ出来るの楽しみだったり?」
「っな……っ、それは、その……」
「……もしかして図星、なのか?」
「ッ……!」
「1号……! ボクも楽しみにしてたんだ、嬉しいよ」
ボクも1号とエッチするの楽しみにしていたけど、1号も楽しみにしていてくれていたんだ。あのお堅い1号が。なんだかすごくグッときた。今日はもうちょっとゆっくり1号に触れていたいな〜なんて考えていたけど方針変更。今すぐ1号のこと可愛がりたい。顔を赤くして、それでもボクの背中に腕を回して抱きついてくれている1号に触れるだけのキスをして服を脱がしに取り掛かった。
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