ベッドシーツと洗濯機/ニゴチゴ

座りっぱなしで凝り固まった体を解すように腕を伸ばす。時計を見れば深夜二時を過ぎており、そろそろ寝る準備をしようと空になったコップを掴んでキッチンへと向かった。
明日は仕事が休みだからと言って、少し夜更かしをしてしまった。朝ごはんは何を食べようかと考えていれば、バスルームの方に灯りがついているのが見えた。
この家にはボク以外には、二人の人造人間しか住んでいない。
「ガンマ〜? 寝ないのか?」
バスルームを覗けば、ガンマ2号が大きな水色の布を持って洗濯機の前にしゃがみ込んでいた。色からして、おそらく2号のベッドで使われているシーツだろう。
そこまで考えて、ボクが作り出した最高傑作のうちの一人が、もう一人の最高傑作と今まで何をしていたのか察してしまった。
「あっ博士。博士はもうお休みになられますか?」
こちらを振り向いた2号はシーツを洗濯機に押し込み、いくつかスイッチを押して洗濯機を動かし始めた。
こんな真夜中にシーツを洗濯しているということは「そういうこと」だろう。
「うん、ボクはもう寝るよ。……2号、ほどほどにね」
「……へへへ、は〜い」
「1号は? 寝てるのか?」
「……実は処理落ちさせちゃって、起きるまで待ってるところです」
「大丈夫なのか? 仲良しなのはいいけど、無理はさせるなよ。もしメンテした方がいいなら見に行くけど」
バスルームからリビングへと移動しながら2号と話す。マグカップを流しへと持って行こうとしたら、2号が持って行ってくれた。
「本当ですか? あっ、でも……」
「どうかしたのか?」
そのまま流しでマグカップを洗いながら、2号は頬を赤らめている。珍しい顔をしているな、なんて思った。
「ヘド博士にも、今の1号は見せたくないので……後日お願いしてもよろしいですか?」
「……構わないよ」
「ボクとヘド博士のヒミツってことで!」
2号は無邪気に笑いながら口元に人差し指を添える。2号がよくする、ヒミツを抱えている時のジェスチャーだ。
2号の顔が珍しいも何も、そういえば2号と面と向かってこういう話をするのは初めてだ。特に、1号との直接的なやり取りの直後の事を話すなんて事も、今までは無かった事だ。
「洗い物ありがとう、2号。それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい、ヘド博士」
タオルで手を拭きながら微笑みを浮かべた2号を見て、そのまま自分の部屋へと向かった。
今夜はたまたま2号だけだったけど、タイミングによっては1号と一緒だった可能性もある。
二人が恋人同士である以上、こういった事は避けて通れない。そもそも、彼らに性器を与えたのもボクだし。同じ家に住んでいれば、いずれ鉢合う可能性だってあるんだった。
ガンマ達が恋人関係にあると知って、それでもボクに仕えようとしてくれたのはとても嬉しい事だ。けれど、仕事以外の時間くらい、二人きりにしてあげる気遣いを見せてあげるべきだったのかもしれない。
「……同棲とか、勧めるべきかなぁ」
明日それとなく言ってみようか。そんな事を思いながら、ボクは自分の部屋へと戻り寝る準備を始めた。

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