夜も更け、奔放な一年生が騒がしくしていたハーツラビュル寮も静まり返った頃。
ベッドに備え付けられていた天蓋を音も立てずに開けて、フロイドは自身のスラックスを掴む。ポケットを漁ればぽろぽろと飴や紙屑が落ちる中、目的の物を取る。
スラックスを適当に放って、天蓋の付いたベッドの中へと戻る。
フロイドが動いてた事に気づかず、リドルは熟睡しているようだった。無防備に眠る姿を見て、フロイドはにまりと口角を上げる。
リドルの頭を撫で、手触りの良い髪の毛を掬っては落とす。そうやって遊んでいたら、リドルの耳が視界に入った。
決して大きいとは言い難い、形の整った耳。赤い髪の毛の間からちらりと見える柔らかそうな耳たぶに穴を開けたらどんな反応をするのだろう。
手に持っていたピアッサーの包装を取り、リドルの耳に当てる。斜めになったら可哀想だから、真っ直ぐ開けられるように角度を補助する魔法を使う。
ピアッサーを握れば、バチンと音がした。自分やジェイドが開けた時もこんなものだっただろうか。一年も前だから忘れてしまった。
そっとリドルの耳を確認する。血は出ていないようで、ほっとした。
「……何を、しているんだい」
「あ、起きちゃった?おはよ〜」
「……なんだか、すごい音がしたような」
そこまで呟いた後、リドルは耳たぶに手を当てる。フロイドに付けられたピアスに指が触れた瞬間、リドルはフロイドを押し倒していた。
「あは、金魚ちゃん寝起きいいね。熱烈じゃん、もう一回ヤりたいの?」
「……やらないよ。それよりフロイド、ボクはピアスを開ける許可は出していないはずだが?」
顔を真っ赤にしてリドルはフロイドを睨みつける。ちらりと見える耳たぶに付いたピアスが光って、見慣れない姿なこともあって意識せずとも目に入った。
「だってさぁ、オレはピアス開いてっけど金魚ちゃんは開いてないじゃん。ピアス付けた金魚ちゃん見たかったんだ〜、怒んないで?ね?」
リドルの機嫌と取るためか、戯れに頬へキスをする。何度かしているうちに怒るのも馬鹿らしいと考えたのか、リドルはため息を吐いて身体を起こした。
「……まぁ、開けてしまったものは仕方ない。だけど、許可なくこんな事をするなんていけない事だよ。おわかりだね?」
「オシオキでもしたいの?金魚ちゃんどんな事してくれんの、楽しみ」
リドルの耳に触れれば、肩をひくりと戦慄かせる。そういえば、リドルは耳が弱かった。というよりも、人間は耳を触ると大抵は敏感に反応する。それが楽しくて、身体を繋げているときに戯れに触るとやんわりと手を止められる事を思い出した。
「そうだね、キミの左耳に穴を開けてもいいのだけれど、ピアッサーなんてボクの部屋には無いからね」
「明日購買に買いに行く?」
「いいや?いらないよ」
そう言い捨て、リドルはフロイドの右耳に噛み付いた。
「痛ぇっ!」
「これでおあいことはいかないけれど、まあいいかな」
唇に付いた血を舌で舐め取りながら、フロイドの耳に付いた歪な歯形を眺める。滲んでいる赤に自身の影を連想させる気がして、気分が良かった。
「……金魚ちゃん痕付けないタイプのクセに」
「付けて良かったのかい?まあ、キミが誰かに抱かれてるなんて知られたくないから付けないけれど」
「オレも噛まない方がいい?」
「好きにするといい」
身体を起こしたリドルのことを押し倒す。さっきまでとは逆だな、と思いながら、噛みつけと言わんばかりに首元を晒したリドルの首元に歯を立てた。
コメント